東洋医学と養生法

土用の丑の日!ウナギよりも大切な食養生における意外な発想

夏の養生法

こんにちは

こころの鍼師 金子 敏昭です。

二十四節気も小暑から大暑に移り変わる暑い時期になりましたが、いかがお過ごしですか?

これからは、熱中症や夏バテにならないような養生が必要になってきますね。

そこで今回は、

東洋医学の視点から見た、夏を健康に乗り切る身体を作っていくための養生法をお届けしていきたいと思います。

東洋医学の養生法シリーズでは、

心の器である身体のメンテナンスに、より比重を置いた内容をお送りしていきます。

お暇な時にサラッと読み流せて、しかも豆知識的な内容もありますので、興味のある方は以下お付き合いくださいませ。

Contents

土用を東洋医学の視点から

夏の養生法

さて、そろそろ土用の丑の日が近づいてきましたが、

まずは、土用を東洋医学的な視点から解説していきます。

そもそも土用とは、春夏秋冬それぞれの季節の変わり目にあたる時期のことですね。

その中でも、厳しい暑さが始まる夏の土用は特に重視されていて、今は土用といえば夏の土用を指すようになっています。

ちなみに、春夏秋冬をさらに細分化した気候の捉え方に、二十四節季や七十二候がありますが、

一年の気候の移ろいを細かく分けて捉えていく考え方は、実は農作業だけではなく医学とも深い関係があるのです。

なぜなら、

気候の移ろいは自然の気の流れを表しており、自然の気の流れは必ず人体の気の流れに影響を及ぼすからです。

実際に、季節によって体調や病状に波があることは経験則的にもよく確認されることですね。

東洋医学の土

そのような自然の移ろいの変わり目の時期をを「土用」と表現しているわけですが、一般的には土用は土いじりを控える時期と言われます。

しかし土用の『土』というのは、東洋医学では「脾の臓」「胃の腑」を表します。

「脾」と「胃」は、消化吸収や水分代謝の働きを持つ消化器系統全般のことで、

生命エネルギーを作り出し、それを全身にサラサラと送り届け、体内の水はけをもつかさどります。

つまり『土』は東洋医学的に、肉体的なエネルギーの中枢を表しているのですね。

もしこの働きが低下すると、エネルギー不足による倦怠感がおこりやすくなりますが、

これが悪化すると『夏バテ』です。

したがって土用を東洋医学的に解釈すると、

『季節の変わり目(土用)は、特に脾と胃の働き(土)を大切にして健康を損なうことがないようにしましょうね☆』

という意味が汲み取れるのですね。

やりがちな不摂生

夏の養生法

それでは、どのようなことが「脾と胃」の働きを低下させる要因になるのか…

ということですが、

肉体的な要因としては、①飲食の不摂生②過度の労働や休息です。

①飲食の不摂生というのは、

単純な食べ過ぎ飲み過ぎ等で直接的に消化器系に負担をかけることです。

まずは食事量のオーバーですね。

それから、

量がオーバーしていなくても、こってりして脂質がたっぷりなもの、甘味や辛味、塩分等の味が濃いものの摂取が続くことです。

これは食事の質の問題です。

さらに、

夏であれば、アイスやかき氷、ビール等の冷たい物の過剰摂取もあり、これは冷温のアンバランスです。

また、

食事時間が不規則で、消化器系の休息と運動のリズムがとれなかったり

早食いで噛む回数が少なかったり、

本来休息する夜間帯に食事をしたりして、消化器系に過剰な負担を強いることです。

これらは「脾と胃」を弱らせてしまう主な飲食の不摂生であり、すでに習慣化されている方も多いかもしれません。

その結果、夏でなくても全身の水はけが悪くなって頭や身体が重だるい、食欲がない、膝が腫れて痛い、足がむくむ等の症状がおこりやすくなります。

次に、②過度の労働や休息というのは、

労働時間と休息時間の極端なアンバランスのことです。

これは睡眠不足や過労のような肉体的疲労だけでなく、寝たきりやそれに近い状態であまり身体を動かさない状態も含みます。

これらの場合もやはり「脾と胃」の機能を弱らせてしまうのですね。

また夏の場合は、暑さによる過剰な発汗も「脾と胃」を弱らせ、気虚状態(夏バテ状態)をひきおこす大きな要因になってしまいます。

つまり東洋医学的には、

夏の土用は特に

食事の量と質に気をつけ、冷温のバランスを取り、消化器に過剰な負担をかけないことと、体力に応じた運動と睡眠時間が大切

ということになるのですね。

養生における意外な発想

あれっ? 意外にも…

夏を元気に過ごすための養生法の中には、定番のウナギの蒲焼きが入っていませんね。

これはいったいどういうことでしょうか…

はい。解説していきますね。

非常に残念ですが、東洋医学的に夏の養生法を考えていくと、

蛋白源が今ほど豊富でなかった昔であればまだしも、現代では栄養が不足するということはほとんどなく、

むしろ栄養の過剰摂取によって、普段から「脾と胃」を弱らせ病気を生み出している状況です。

実際に、東洋医学的に身体を診察してみると、程度の差はあっても「脾と胃」に負担のかかっていない人はほぼいません。

したがって、

「スタミナをつけるため!」と称して、

焼肉やウナギの蒲焼等を食べることは、「脾と胃」にさらなる負担をかけてしまう人の方が多いということになるのですね。

もちろん、ウナギの蒲焼きを食べてはいけないということはありませんが、

それを食べることがすなわち、夏を元気に乗り切ることとイコールにはならなさそうです。

結論としては、

現代人の場合、夏の土用だからといって特定の何かを摂取するというよりは、

逆に摂取を控えることで「脾と胃」を休ませる

という発想がとても大切です。

いくら高カロリーのものを摂取したとしても、「脾と胃」がへばっている状態では、そこから有用なエネルギーを取り出せないばかりか、さらに機能に負担をかけることになってしまいますので注意が必要です。

内熱を除く食材と養生

夏の養生法

ここまでは、過剰摂取の弊害について解説してきましたが、逆に積極的に摂取した方が良い食材をご紹介すると、

きゅうり・トマト・なす・ゴーヤ・冬瓜・すいか等の夏野菜です。

 夏野菜は身体の余分な熱をさまして尿で排泄する作用がありますので、夏は特に旬の野菜を少し多めに摂取しておくことをおすすめします。

それに加えて、

食事の量と質、冷温のバランス、腹八分目、よく噛む、食事に時間をかける、食事時間を規則的に、夜九時以降は胃を休める等が基本です。

 特に、腹八分目は難しくても九分目くらいには抑えられるように、噛む回数を多くして少しでも食事時間を長めにとってみてください。

 噛む回数を意識することが難しければ、一口の量を少なくして一回の食事での噛む回数をトータルで増やし、胃への負担を軽減するようにするとよいでしょう。

現代では栄養が足りない人はほぼいませんので、まずは胃への負担を軽くすれば身体は軽く体調は楽になっていきます。

そのように、

「脾と胃」を大切に使っていくことは、夏を元気に乗り切る身体を作っていく秘訣になります。 

ということで最後にまとめると、

まとめ

夏の養生法のまとめ

●土用の『土』は東洋医学では「脾の臓」と「胃の腑」を表し、それは生命エネルギーを作り出す肉体的なエネルギーの中枢で、この働きが低下すると『夏バテ』がおこる。

●土用には、季節の変わり目(土用)は特に脾と胃の働き(土)を大切にして健康を保ちましょうという意味が汲み取れる。

●「脾と胃」の働きは、飲食の不摂生と過度の労働や休息で徐々に低下する。

●ゆえに、夏の土用は特に食事の量と質に気をつけ、冷温のバランスを取り、消化器に過剰な負担をかけない習慣と同時に体力に応じた運動と睡眠時間が大切。

●夏の土用だから何かを摂取するというよりは、逆に摂取を控えることで「脾と胃」を休ませるという発想がとても大切。

●逆に夏野菜は身体の余分な熱をさまして尿で排泄する作用があるため、夏は特に旬の野菜を摂取することが必要。

ということでした。

以上今回は、

土用の丑の日にちなんで、夏を元気に乗り切るための養生法のヒントについて解説してみましたがいかがでしたでしょうか。

もし、これだったらできそうかな…というものがあれば、少しずつでも実践していただければ幸いです。

またこれからも不定期ではありますが、身体に対する養生法をお届けしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

今回の内容が、

あなたの自然治癒力を高めて、より良い未来をデザインしていくためのヒントになりますように。

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