こんにちは。
心と身体の専門家 金子 敏昭です。
今回は西洋医学的な切り口で、心が病気をつくるメカニズムを、脳のある重要な働きからわかりやすく解説していきたいと思います。
それではさっそく一番重要な前提からお伝えしていきますが、実は人間というのは、健康な状態でいるのが普通の状態として設計されています。
これは今回の内容を理解する上でのとても大切な大前提です。本来人間は、健康な状態があたりまえの状態として創られているのですね。
まずはここまでよろしいでしょうか?
ただしこの前提は、ふたつの場合を除いてということになります。
それは、生命が危険にさらされているような状況の時と、もうひとつは飢餓状態にある時です。
どちらも同じようなものかもしれませんが、動物としての人間には優先順位というものがあって、まずは生命の安全が最優先されます。
健康であることは二の次ですね。
生命の安全が確保されているからこそ、次に健康を考え始める余裕ができるというところでしょうか。
ということですので、
そのような緊急な状態でなければ、基本的には人間はほっておいてもそれなりに健康で一生をまっとうできるようにできているのですね。
とはいえ実際には、
リアルに命が危険にさらされたり、飢餓状態に陥ったりすることもあまりない現代において、病気で悩んでいる人の数はものすごく多いはずですよね。
本来、人間は健康でいられるように創られているにも関わらず、これはいったいどういうことでしょうか?
その謎を解くカギとなるのが脳のある働きなのですが、実は脳にはふたつのチャンネルがあります。
私はそのふたつのチャンネルを「健康モード」「病気モード(戦闘モード)」と呼んだりしていますが、専門的には「苦痛系回路」「報酬系回路」といわれています。
これをわかりやすく説明すると、
人間は本来「健康モード」に設定されています。これは脳の「報酬系回路」が働いている状態で、身体がリラックスしている状態です。
この状態は、やる気ホルモンの「ドーパミン」、幸せホルモンの「セロトニン」、愛情ホルモンの「オキシトシン」等の各種のホルモンがよく分泌されている状態で、免疫機能も正常に働いている状態です。
この状態であれば、あなたは自然と健康で過ごせます。仮に病気であったとしても、治癒力が働きやすい状態なので病気も治りやすくなります。
では逆に、「病気モード」ともいう脳の「苦痛系回路」が働いている状態というのはどういう状態かというと、これは緊張している状態ですね。
では、人間どんな時に緊張するかというと、目の前に脅威が現れた時…
たとえば仮に、山を歩いていていきなり目の前にトラや熊等の猛獣が現れたとしたらどうでしょう。
しかも、その猛獣があまり友好的な雰囲気ではなかったとしたらどうでしょうか。もう思いっきり緊張しますよね。
そしてこの時身体はどうなるかというと、血液は筋肉のほうへ流れ出します。
筋肉の方へ血液がまわされるので、戦ったり逃げたりするのに適した状態になるのですね。
身体の中ではどういうホルモンが分泌されるかというと、アドレナリン、コルチゾールというストレスホルモンがよく分泌されるようになります。
その結果、血圧や心拍数、血糖値は上がり、免疫の働きは抑制されていきます。
でもそれによって、戦闘モードに入って目の前の脅威を排除しようとするわけですね。
ただしこの状態は、病気や傷を治したりする働きというのは後回しになっている状態です。でもそれは当然ですよね。
最優先するのは生命の安全ですから、猛獣に襲われそうになっている時に、ゆっくり病気や傷を治す方にエネルギーを割いている余裕はないのですね。
これは、脳の苦痛系といわれる回路が働いている状態ですが、自分の安全を守るためにあえてこのような状態になっているのですね。
生命の安全を守るためには、苦痛系は苦痛系で必要な働きなのです。
そして、猛獣がいなくなって目の前の脅威が排除されたら、またリラックスして脳の報酬系が働き出して健康モードに入ります。
そうなると、筋肉に流れていた血液が今度は体内の内臓諸器官に流れ出し、損傷した細胞の修復等にエネルギーが使われるようになります。
通常であれば、このように、報酬系と苦痛系の働きのバランスはとれているものです。
でも残念ながら、現代人はこの緊張している状態、日常の大半で苦痛系を働かせて過ごしている人がほとんどです。
現代人は、常に目に見えない脅威というものにつきまとわれている状態でいる方がとても多いのですね。
ですから本質的には、常に猛獣に襲われているのと変わらない緊張状態で過ごしているということになります。
そうすると、脳の苦痛系が働いて常に戦うことや逃げることが優先され、病気の回復は常に後回しの状態になりますので、病気が治っている暇がないわけです。
でも実は、こういうことを誰しも無意識的にやってしまっています。
現在このブログをご覧になっているあなたも例外ではないかもしれません。
これが、リアルに生命が危険にさらされたり、飢餓状態に陥ったりすることがない現代において、病気で悩む人の数が多い理由なのですね。
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